密林の王のチョコレート、黄金のカカオ豆とは?



目次


古代から人々に愛されてきたチョコレート。その魅惑の味は意外な人たちも魅了してきたようです。それはいったい・・・?


神様がくださった食べ物カカオ


古代メソアメリカに興った、マヤ・アステカを始めとする帝国の人々にとって、チョコレートの原料カカオ豆は、神から与えられた聖なる食物でした。

その神は、マヤ・アステカの最高神の1人“ケツァルコアトル”と言い、風の神であり火の神であり、人間に様々な知識をもたらしてくれた神様です。

それまで神々の食べ物であった「トウモロコシ」と「カカオ」を、人間にも分け与えて呉れた有難い神様です。トウモロコシは、当時の人々の主食でした。

人間が生きていくのに、必要不可欠と言うわけではないカカオが、主食のトウモロコシと同列に扱われ、神からの贈り物とされる。これはカカオが当時の人々、特に上層階級にとって、いかに魅力的で価値のある食物であったかの証明です。

宗教儀式や重要な祝いの席には欠かせない食物で、後にはカカオ豆は通貨としても流通しました。

密林の王が味わったチョコレート


カカオ豆から作りだすチョコレートは、何千年もの間飲み物として、人々に摂取されました。

しかし現在の私たちが「ホットチョコレート」と聞いて思い浮かべる、甘くて暖かな飲み物とは、いささか違った味わいの飲み物です。当時の基本的な作り方を見て置きましょう。

  1. 収穫
  2. 熟したカカオポッドから、カカオ豆を取り出します。アステカの首都テノティトラン(現在のメキシコシティ)には、カカオ豆を等級別に分けて売る商人が多数居ました。

  3. 焙煎
  4. 取り出したカカオ豆を焙煎します。『コマル』と呼ぶ平たい陶器の皿にのせて、煎り焼きにしましたが、これにより独特の風味が引き出されます。

  5. すり潰し
  6. 煎り上がった豆の殻を取り除き、『メターテ』と言うデコボコのある硬く平たい石の上に乗せ、手に持った石『マノ』ですり潰します。

  7. 水溶き
  8. すり潰したカカオを湯か水で溶き、トウモロコシの粉などでとろみをつけます。

    ここに唐辛子やバニラなどのスパイスを加え、アナトーと言う食紅も入れて味わいました。

    アナトーとは、ベニノキの種から抽出した赤い色素ですが、これを加えると生贄の血のような色に染まり、特に宗教的儀式には必要とされました。

    蜂蜜や樹液で甘味を付けて飲んだりもします。

    こうして作った飲み物を“ショコアトル(xocoatl)”と呼びます。「苦い水」の意味ですが、お察しのようにこれがチョコレートの語源です。

  9. 泡立てる
  10. 古代の“ショコアトル”は、出来るだけ泡が多く立って居るものが良いとされました。

    抹茶も細かい泡立てが好まれますが、こう言う感覚ってあるものなのですね。

    こちらでは泡立てるのにかき混ぜようとはせず、器から器へ注ぎ変えて空気を含ませました。

    使用する器は美しく彩色され、模様が描き込まれ、儀式的価値を高めます。貴人たちはこれを少しづつ口に含み、啜るように飲みました。

    上質の“ショコアトル”は、権力者や地位の高い戦士・神官・裕福な商人しかありつけない飲み物で、これを飲めるのはステータス・シンボルとなります。



チョコレートに関する作法


マヤ・アステカの上流社会で、“ショコアトル”は日常折に触れ飲まれましたが、特に宴会の最後には決まって供されるものでした。

現在の食後のブランデーやコーヒーのような扱いで、喫煙具と共に提供されます。

瓢箪の実で出来た器に入れられ、金の匙や亀の甲羅から作ったスプーンが添えられます。

庶民も“ショコアトル”にありつくことは出来ましたが、チョコレートとトウモロコシで出来た粥状の飲み物で、質の劣るカカオで作られました。

それなりに美味く滋養に富む飲み物と考えられ、力仕事が待っている日や旅に出る朝には、必ず一杯の“ショコアトル”を口にしました。

16世紀アステカ人の元を訪れたスペイン人たちに、アステカの人々は好意でこの“ショコアトル”を勧めました。

しかしスペイン人の口には合わなかったようです。

アステカの王様には申し訳ないですが、私もスペイン人と同意見です。


貨幣として通用するカカオ豆



食物として珍重されたカカオですが、その価値ゆえメソアメリカでは、貨幣としても流通しました。

16世紀の年代記作者、スペインのフランシスコ・オビエド・イ・バルデスは、ニカラグアのニカラオ族について次のように書き残しています。

「彼らの間では兎1匹がカカオ豆10粒で売り買いされる。チコサポーテの実(チューインガムの原料になります)8個はカカオ豆4粒、奴隷1人なら100粒は払わねばならない。娼婦の一晩の値段は、交渉しだいだが8粒から10粒要求される」

家庭用の様々な品の代金や、職人の手間賃もカカオ豆で支払われました。

こうなると出て来るのが贋金で、グアテマラ南部のバルベルタ遺跡からは、精巧に作られたカカオ豆の模造品が見つかっています。

これはカカオ豆の殻に灰などを詰めて作ったもので、あまり精巧に出来ているので本物と信じ込まれ、あやうく“カカオ豆”に分類し、博物館の倉庫に仕舞い込まれるところでした。

スペイン人がアステカの宮廷を占拠した1521年には、カカオ豆はれっきとした貯蔵資産として認められていました。

実際カカオ豆は、資産として打ってつけだったのです。

特定地域の産物なのに、大陸全体で消費され価値が認められ、保存が効き壊れにくく、背負子で簡単に運搬できます。

マヤ・トルテカ・アステカと移って行った帝国でも、税や貢物をカカオ豆で徴収しました。


海を渡るカカオ豆は、大規模メーカーの工場へ


最近ではカカオ生産地でのチョコレート造りを目指して、クラフトチョコレートメーカーも出てきました。

しかし多くのカカオ豆は、麻袋に詰められたまま産地を離れて海を渡り、欧米のチョコレートメーカーの工場へ運び込まれます。

世界に流通するチョコレートの95%は、大規模メーカーの大きな工場内で生産されます。

現在チョコレート市場を支配しているのは、こうした少数の欧米企業で、彼らは業務用チョコレートや、クーベルチュールを製造します。

その製品のほとんどは菓子メーカー・ショコラティエ・パティシエの手元に届けられ、一般消費者に販売されることは少ないのです。

そのため業界有数の大手メーカーであっても、世間的に知られていないことも間々あります。

バリー・カレボー・カーギル・ADM・ベルコラーデなどですが、ご存知ない方も多いでしょう。ネスレ・モンデリーズ(旧クラフト)・マースなどは少しは有名です。

これらのメーカーは、大量のカカオ豆を手に入れる必要があり、そのほとんどを、コートジボワールやガーナから輸入しています。

これらの国々で広く栽培されるカカオは、風味では劣りますが、他のどの国よりも多い収穫量を約束してくれます。

『安定供給』これは輸出入品にとって、品質・価格と同程度に重要な要素です。

現在の大規模チョコレートメーカーと言えども、もともとは家族経営の小さな会社でした。

19世紀に誕生した後、買収や成長努力を経て、大規模メーカーにのし上がりました。

ベルギーなども、かつては多くの独立系チョコレートメーカーが存在して居ましたが、現在では数社に収斂してしまいました。


国際取り引き


カカオ豆は何世紀にもわたり、『国際商品』として取り引きされて来ました。

これは産地や品質に関係なく、一定の価格で取引される商品の事です。

国際取り引きには中間で多くの人間が関わるため、取引によってもたらされる利益は、仲買人や加工業者に吸い取られてしまいます。

税金もたっぷりかけられ、生産農家はごくわずかの対価しか得られません。

ここでカカオ豆の国際取り引きの課程を見て置きましょう。


  1. 仲買人がカカオ生産農場を回り、袋詰めのカカオ豆を買う。
  2. 地域の卸売業者が仲買人が集めた豆を買う。
  3. それを輸出業者が大量に買い集め、等級ごとに分け、再び袋詰めにして船に積み込み輸出される。
  4. 今度は国際仲買人の間で売買され、最終的に欧米の大規模チョコレートメーカーに売られる。
  5. メーカーはチョコレートやクーベルチュールに加工するが、このような大規模メーカーは、世界でも数えるほどしかない。
  6. 製造されたクーベルチュールは、これも大規模な菓子メーカーに売られ、そこで最終的な製品に加工される。


直接取り引き


従来の国際取り引きに対して、最近増えて来たのが、クラフトチョコレートメーカーを中心とした直接取り引きです。

メーカーは中間業者を通さずに、カカオ豆を農場や委託業者から直接買い付けます。

この方法ですと、生産者は適正な価格で豆を売ることが出来、メーカーは栽培者と直接取り引きする事で、好みの品質や風味の豆を手に入れられます。

またこのような品種を作って欲しいなど、希望も伝えられます。

生産者側からも、カカオ豆の種別・品質について、有益な情報をメーカーにもたらすことが出来、価格の交渉もできます。

良いことづくめのようですが、この取り引きの形態は“個”対“個”になりがちで、品質や量を保証する安定性に欠けるのです。

直接取り引きの課程も見て置きましょう。


  1. 農場で袋詰めされたカカオ豆は、委託業者または仲買人に販売されます。
  2. 豆は輸出業者に引き渡される、あるいは直接メーカーに輸出されます。
  3. メーカーは仕入れた豆を自社で加工し、製品化します。

かなり中間業者が省かれました。

中間手間賃が減るおかげで、メーカーはより多くのお金を、豆の品質に対して投入できるようになりました。

良質の豆には、フェアトレード価格の5倍以上の値がつくのも、珍しくありません。

そして直接取り引きは、トレーサビリティ(追跡可能性)を、保証するのです。

豆の産地や栽培農園を簡単に遡れます。直接取り引きの最大の利点かもしれません。

国際商品では、各地から集められた大量の豆がまとめられ一度に動くので、個々の豆の詳細情報を知ることはまず不可能です。


ミルクチョコレートのお話


この辺りで甘いお話を。

ミルクチョコレートを初めて作ったのは、スイス人のショコラティエ、ダニエル・ペーターです。

口当たりの良さ日持ちの良さで、あっという間に人気商品となったミルクチョコレート、現在世界で販売されているチョコレート製品の4割に、ミルクなどの乳製品が使われています。

チョコレートとミルクは基本的に相性は良いのです。

しかしカカオは湿気や水分との相性は良くないので、ミルクもいったん濃縮して水分を飛ばしてから、カカオニブと砂糖と混ぜ合わせます。

こうしてできたパン粉状のものを粉砕してコンチングをし、材料どうしを馴染ませるために、ココアバターを混ぜ込み型に流し入れます。

現在チョコレートメーカーは、ミルクチョコレートをさらに進化させようと企てています。

ほろ苦いカカオ分を増やしてみる、牛乳以外のミルクで作ってみるなど、小規模なクラフトチョコレートメーカーを中心に、奮闘中です。


ミルクチョコレートの種類


  • 定番ミルクチョコ
  • カカオ25~35%・ミルクパウダー25~35%・砂糖25~35%

    ミルクチョコと言えば最も一般的なチョコレートなので、ややもすれば安価なイメージがつきまといます。

    しかしミルクの優しい甘さ・まろやかさと、カカオの風味の取り合わせは、定番中の定番。濃厚な赤茶色で、パキッときれいに割れるのが高品質です。

  • ダークミルクチョコ
  • カカオ50~70%・ミルクパウダー20~25%・砂糖20~25%

    定番ミルクチョコと、ダークチョコの中間に位置するチョコレート。定番ミルクよりも、多くのカカオ分を含みます。

    本格ダークは苦手だけれど、カカオ本来の風味にも触れたい人向きのチョコレート。

  • フレーバー入りミルクチョコ
  • カカオ30%・ミルクパウダー30%・砂糖35%・フレーバー5%

    チョコレートの中にフレーバーを加える方法は、主に2つあります。

    1つはコンチングの行程中に、ドライフルーツパウダーやスパイスなど、パウダー状のフレーバーを練り込む方法。

    もう1つは、フレーバーの存在感を際立たせるため、テンパリングの段階で、フルーツや海塩など粒状のフレーバーを混ぜ込む方法です。

  • 牛乳以外のミルクチョコ
  • カカオ50~70%・様々な種類のミルクパウダー20~25%・砂糖20~25%

    牛乳が定番のミルクチョコですが、慣れて来ると変化を求めるのが人間です。

    そこで風味や食感に変化を付けるため、あれやこれやと牛乳以外のミルクを探し始めました。

    羊・山羊・バッファロー・ラクダ・・・脂肪分が多くクリーミーな味わいのある乳を提供してくれるバッファロー、牛乳よりも低カロリー・低脂肪で、ビタミンC・カルシウム・鉄分などは豊富に含む、ラクダミルクなどが注目されています。

    乳製品にアレルギーのある人やヴィーガン向けには、アーモンドミルクやココナッツミルク、米から抽出する穀物ミルクを使った製品も注目されています。

これらの動物以外にも、ヤクや水牛も私たちにミルクを提供してくれます。

しかしサイやライオン・虎など、自分の子どもを育てるだけで精いっぱいの動物から、ミルクを横取りするわけには行きません。

動物由来のミルクチョコの種類は、あまり多くは望めないようです。


投稿日:2019年10月11日 (更新日:2019年11月19日)


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